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「はぁ…。もう最悪だよ」
「そんな落ち込むなって。今年は仕方ないよ」
俺はそう言って鼠を励ました。ただでさえ小さいのに、滲み出る悲壮感のせいか、鼠の体はより小さく見える。本当に気の毒だ。
「この年は安泰だ、なんてなにも準備をしなかったお前が悪いんだ」
通りかかった牛は睨み付けながらそう言った。きっと、”あの時”のことをいまだに根に持っているのだろう。
「俺は今も変わらず準備万端だ。棚ぼた狙いのお前と違ってな」
「なんだと!」
今にも飛びかかりそうな両者に、まあまあ、と俺は間に入った。牛は俺の目をじっと見つめ、お前もそっち側かと言わんばかりに睨みつけたが、ふん、と言ってその場を立ち去った。
「クソが!」
怒る鼠を宥めつつ、俺は去っていく牛に目をやった。その時、ごーん、ごーん、と大きな鐘の音が響いた。
「はぁ、十二年前と同じじゃないか」
ぼそり、と俺は呟いた。
「そんな落ち込むなって。今年は仕方ないよ」
俺はそう言って鼠を励ました。ただでさえ小さいのに、滲み出る悲壮感のせいか、鼠の体はより小さく見える。本当に気の毒だ。
「この年は安泰だ、なんてなにも準備をしなかったお前が悪いんだ」
通りかかった牛は睨み付けながらそう言った。きっと、”あの時”のことをいまだに根に持っているのだろう。
「俺は今も変わらず準備万端だ。棚ぼた狙いのお前と違ってな」
「なんだと!」
今にも飛びかかりそうな両者に、まあまあ、と俺は間に入った。牛は俺の目をじっと見つめ、お前もそっち側かと言わんばかりに睨みつけたが、ふん、と言ってその場を立ち去った。
「クソが!」
怒る鼠を宥めつつ、俺は去っていく牛に目をやった。その時、ごーん、ごーん、と大きな鐘の音が響いた。
「はぁ、十二年前と同じじゃないか」
ぼそり、と俺は呟いた。
ファンタジー
公開:21/01/10 16:57
温かいのが、いちばんよね。
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