土曜日午後六時半 チーズのないハンバーグ

スライスチーズを買ってくるのは忘れるくせに、夜口笛を吹くと蛇が出るとか、食べてすぐ寝ると牛になるとかいう言い伝えは未だに覚えている。

これをヒンドゥー教徒が聞いたらどう感じるだろう。神々の宿る牛になるため、すぐ眠るだろうか。
僕は神になりたいとは思わない。週末にこうして、好きな人と一緒に晩御飯を作ることが出来なくなってしまう。

チーズが乗っていないハンバーグを食べながら、インド出身の彼女に聞いてみた。
「なにその言い伝え。初めて聞いた」
「どう？牛になりたい？」
「んー、私別に信仰してるわけじゃないし、神様だと思ったこともないからなあ」

食べ終えると、二人で立ち上がってキッチンに皿を運ぶ。僕が洗い、彼女が拭き取る。
片付け終わると彼女が、
「ふぅ、美味しかったね」
と言って抱きついてきた。
さらに続けて、
「じゃ、一緒に牛になろ」
と囁き、二人でベッドに倒れ込んだ。