時間のつぼみ

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愛猫が花を咥えて私の部屋にやってきた。体を満足に動かす事の出来ない私は猫が持ってきたその花をじっと見つめる。
その花は不思議な花だった。
咲く事を忘れたかのように、一月経とうとつぼみが花開く様子がない。
枯れる事を忘れたかのように、半年経とうと枯れる様子もない。
造花か?いや、あれは生花だ。その証拠に家族が毎日水を取り替えてくれる。
私はその花について考える事が多くなった。
前までは動かぬ体に己を責め、早く死にたいとすら思っていた。
だが今はこの花が咲くところを見たいと思っている。どんな花が咲くのか、どんな色の花なのか、その花のつぼみを見ているだけで時間を忘れる。
私はこの花に時間のつぼみと名を付けた。
私に時間を忘れさせる魔法のつぼみ。
私に家族の温もりを思い出させてくれた魔法のつぼみ。
ああ…こんな私をまだ愛してくれる人がいる。まだ死ぬわけにはいかない。
私もあの花の様に長く生きよう。
公開:21/01/09 20:50

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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