Beef's Broiling Question

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「1人BBQは楽しいか?」
洋二は椅子から転げ落ちた。驚きすぎて、声が出なかった。
「おいおい、大丈夫か」
"それ"はバリトンボイスで洋二に語りかけた。確かに、声が出ている。
「に、に、に、肉が喋った!?」
町の肉屋で買った、厚切りのバラ肉だ。国産牛は初めて買ったが、喋るとは知らなかった。
「肉が喋ったって良いだろ?」
「普通肉は喋らないと思いますが…」
何故か、敬語になる。脂身の向こう側に渋い中年男性が透ける。
「そろそろ、ひっくり返してくれ」
丁重にひっくり返す。脂が、炭に落ちて音を立てる。
「…どうして喋れるのですか?」
「俺が喋るのは、まだ"生"があるかr」
そこで言葉が途切れた。肉は少し黒ずんでいた。
口に運んで咀嚼する。旨い。だが、素直に味わえない。

「よーく味わって食ってくれよ」
まだ焼いていない肉が、洋二に語りかけた。

洋二は残りの肉をまとめて金網に乗せた。
ホラー
公開:21/01/09 19:15
牛まつり

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