ウシゴンクエスト

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『干支丼』

定食屋の壁に、その貼紙は掲げられていた。
なんでも、ネズミ丼からイノシシ丼まで、様々な肉を用いた12種類の丼が食べられるらしい。
「はいトリ丼お待ち」
カウンター隣の若者の前に丼が置かれた。それは一般的な焼鳥丼に見えた。
何を注文しようか。私は勘案した。
初めて入る店だ。それに私は『冒険』が大嫌いだ。手堅く行こう。
「ウシ丼ください」
店主の手が止まった。隣の若者が、目を見開いて私を見ていた。
「お客さん、ウシ丼だね?」
店主は冷凍庫を開く。眩い光が飛び出す。私は思わず目を瞑る。


「ここは?」
気がつくと私は、石の壁で出来た建物の中にいた。
背後から唸り声が聞こえる。身長3mはあろう怪物がこちらを見下ろしていた。怪物は、体つきは人間のようでありながら、頭が牛であった。携えた斧が鈍く光る。
私は全力で逃げ出した。

――そう、これは私がウシ丼にありつくまでの物語。
ファンタジー
公開:21/01/09 19:09
牛まつり

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