一角牛

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「我が名は一角牛(いっかくぎゅう)」
それは牛皿をつつきながら晩酌していた時の事だった。
幻覚を見るほど酔ってはいない。しかし目の前には掌サイズの牛がいた。額から一本の赤い角が生えている。
「一角獣?」
「獣ではない。牛だ。けしからん奴め」
けしからんのはどっちだ。幻獣気取りの牛め。
俺は角に手を伸ばし、引っこ抜いてやった。角はいとも簡単に抜けた。
と同時に、牛が「もうっ!」と可愛らしい声を出したものだから気勢がそがれた。
摘まんだ角を見る。鷹の爪のようだ。俺はそれを牛皿にのせた。
牛皿が暗褐色に染まった。生臭い。
「【皿】に角を生やすから【血】になったのだ」
俺は牛を見る。笑った。
「お前は【午】になってんぞ」
牛は間抜けな馬面をひんむいて、ヒヒンと鳴いた。
「早く角を返せ!」
ただ返すのは面白くない。俺は先日、奈良の友人から貰ったものを付けてやった。
「これは?」
「バカにお似合いだ」
その他
公開:21/01/09 18:18
牛まつり

壬生乃サル

まったり。

2022年…3本
2021年…12本
2020年…63本
2019年…219本
2018年…320本 (5/13~)

壬生乃サル(MiBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)

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