シェアの発達

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情報通信の発達は、シェアの発達でもあった。

文字に始まり、画像、映像と、人はみなそれぞれ、自分の表現したいと思うものを、より感覚に近いレベルでシェアできるようになった。

脳がイメージするものを直接シェアできるようになってから10数年が経つ。人は見たもの、想像したものを瞬時に世界に発信できるようになった。

そしてこのほど、思考そのものをシェアできるようになった。
人たちはそれぞれが憧れる対象の思考をいとも容易く模倣できるようになった。

ある者は世界的なリーダーに、ある者はカリスマ経営者に変身していった。

そして世界の誰もがトップになった。

トップにはトップとしての矜持がある。誰かがやらねばならぬ仕事があったとしても、それがトップに相応しくなければ誰かにやらせなくてはならない。

その誰かになった者は、世界のどこにもいなかった。
崩壊の足音が、すぐそこまで迫っていた。
SF
公開:21/01/10 16:32

ゆるき

面白かった、と読後に思っていただけるようなお話を目指していきます。

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