書初め〔牛〕

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元旦恒例の書初め。つまんないな…ベチャ!
僕の顔に墨が飛んできた。
「ごめん」
横で僕と同じく書初めをしていた直くんが言った。
そして僕の顔を見て笑う。
面白い遊びを発見した。
僕と直くんは筆を使って、墨を飛ばし合う。
「ああー!!」
直くんが障子を指差す。無数の墨で黒の斑模様になっていた。
ん?牛に似てる。
「お習字してるのに、何騒がしいの?」おばあちゃんの声、近づく足音が聞こえる…絶対絶命!
僕はピンっ!ときた。書初用紙をひらりと持ち、「さあ!牛さんこっちだ!」と障子に向けて、新しい書初用紙をヒラヒラ。僕は闘牛士だ。「さあ!来い!」ピクッと動いた障子牛は僕の紙に突進し、僕の紙に乗り移る。それを見た直くんは、急いで半紙に文字を書いて「こっちに来い!」と牛を誘導した。

様子を見に来たおばあちゃんは、ぐるりと部屋を見渡す。
「墨がついてるのは顔だけね…あら?絵の牛が草の文字を食べてるわ」
ファンタジー
公開:21/01/10 13:11
更新:21/01/12 23:41
牛まつり

さささ ゆゆ( 神奈川 )

最近生業が忙しく、庭の手入れが疎かな庭師の庭でございます。

「これはいかんっ!!」と突然来ては草刈りをガツガツとし、バンバン種を撒きます。

なので庭は、愉快も怖いも不思議もごちゃごちゃ。

でもね、よく読むと同じ花だってわかりますよ。


Twitter:さささ ゆゆ@sa3_yu2





 

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