天満宮の使卑

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打出の小槌は、蓄財と食の神とされる大黒天の持ち物である。
大黒天の使いである鼠は、打出の小槌から現れた米俵を蔵に向かって運んでいる。
すると、その鼠の姿を悔しい面持ちで見ていたのが牛だ。
本来なら自分が干支の筆頭で、大黒天の使えとなっていたはずなのに、自分の背中に乗った鼠に先を越されてしまった。
牛は、鼠が蔵に米俵を運んでいるすきに、大黒天に近づいて言った。
「大黒天様、私のほうが沢山の数の米俵を、鼠より早く蔵に運び込むことができます」
米俵の上に立ち、打出の小槌と大きな袋を持った大黒天は、満面の笑みで返答した。
「おやおや牛か。そなたが使えるのは、儂ではなく、あそこにおられる御仁ぞ」
牛は、大黒天が指さす方向を見ると、天神様と崇め奉られていた亡き菅原道真公が手招きをしていた。
こうして牛は、道真公の使えとなり、現在でも道真公を御祭神とする全国の天満宮には、さまざまな臥牛像が鎮座している。
その他
公開:21/01/10 09:14
牛まつり 打出の小槌 大黒天 米俵 天神様 菅原道真 天満宮 臥牛像

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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