光秀の野望、希望

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織田信長が死んだのは十日ほど前のことだ。
歯向かう輩の尽くを討ち果たし、日ノ本全てを身内で分割しようとする大殿様の考えは、日ノ本そのものを滅ぼす悪手。どのみち我らの誰かが愛想を尽かし、殺していただろう。
情を解さぬ者に、人を統べる器はない。

だから、謀反を起こした。悔いは無かった。私の家中も覚悟を決めている。これで全てが救われたと思いたい。
しかし、だ。
そんな私にも、人を統べ日ノ本を平らかにする器が存在しない。
私では、天下泰平をもたらす事など夢のまた夢。
だが幸いにも、丁度いい逸材が身近にいる。私とは犬猿の仲に見えるらしいその者に、後事を託すことにした。
そら見えてきた。遠くからでも一目瞭然。
金の瓢箪の馬印だ。天王山にも奴側の旗が既に翻っている。

全ては手筈通りだぞ秀吉殿。完膚なきまで、情け容赦なく叩きのめし、私を討ち取ってみせろ。

さあ、一世一代の名演技の時間だ。
その他
公開:21/01/08 21:14

加賀守 崇緒( 猫屋敷 )

気まぐれなハチワレ猫です。
頭抱えながら文章を考えてます。
スイカと芋と肉と魚に、お米とお酒、ブドウが好き。
よろしくお願いします。

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