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猫の影法師と暮らしている。
僕が寂しがるといけないと思ったのだろう、飼っていた猫が死んだ時、影を残していってくれた。もう二十年以上も前の話だ。
元々が黒猫だったから影になっても余り違和感はない。
壁や天井を自由に歩き回り、以前と変わらない気儘な暮らしを楽しんでいる。
時おり何かを思い出したようにカリカリの影をぽつぽつと齧る。別に食べなくても問題はないようだけど、たまに新しい味を用意すると喜んでいるようには見える。影でも味の違いはあるようだ。
実体があるわけではないから触れることは出来ないが、夜になると僕の胸に顎をのせて眠るのは今も昔も変わらない。
随分と長く生きているせいか、近頃ますます影が大きくなってきた。それに仕草もどこか人間くさい。二足歩行したり胡座をかいたり。さすがに喋りはしないが、僕の言葉を理解している節はある。
ところで最近、しっぽが二又に分かれて見えるのは気のせいだろうか。
ファンタジー
公開:21/01/08 20:56

たそがれる猫の城

主にTwitterで140字小説やマイクロノベル等、短いお話をのんびりと書いています。

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