時間のつぼみ

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盆栽が趣味の祖父は毎日松の木を眺めてはつぼみが開くのを待っている。
私には松の木の花の何がいいのか全然分からない。綺麗じゃないしつぼみと区別がつかない。
「それはお前さんがまだ子どもだからじゃ。大人になればいずれ分かる。松は待つ。松のつぼみは時間のつぼみ。己の生き方そのものじゃ」
そうやって楽しそうにしている祖父が私は大好きだった。
でも家族はそうじゃなかった。祖父に早く亡くなってほしいと祖父の生き甲斐である盆栽を壊した。
楽しみを奪われた祖父はあれよあれよと衰え亡くなってしまった…
そんな祖父が遺言で遺産と一緒に松の木を遺族全員に渡した。
私はそれを祖父と思い、大切に育てた。他の皆は早々に捨てた。それがいけなかったのかな…私以外の皆は祖父の後を追うように亡くなった。
私は今も盆栽を大切にしている。今なら祖父の言葉の意味がよく分かる。私の松の木は紆余曲折しながらも力強くつぼみをつけている。
公開:21/01/08 20:37

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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