牛飼いになりたいなんて言ったことないけど

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一度でもふくろうを食べた人間は牛飼いになれないよ。
僕が通う小学校の裏で牛を飼っているおじさんの言葉だ。
おじさんは少年とカメラが大好きでいつも僕にお金を握らせては写真を撮って逃げてゆく。くるぶしとか生えぎわとか歯ぐきの写真を。
牛は人間の罪を見抜く。牛を飼うなら心清らかに生きろ。それもおじさんの言葉。
僕の村ではふくろうを食べる。集落ごとにふくろう獲りの名人がいて、秋祭りや七五三や首吊りがあったときなどに皆で鍋を囲む。
ふくろうはいわしが好物で、僕は父親と一緒に漁港で仕入れたいわしを夜通し歩いて集落に運び、氏神さまの森で餌付けされていない野良の牛を探した。
森にすむ牛の胃袋にはもれなくふくろうが住んでいて、もぉという声はふくろうの鼾だ。飼われた牛がもぉと鳴くのは野良への憧れだとおじさんは言った。
僕は牛のおしりにいわしを。
出てきたふくろうをズドン。
祭りははじまり僕はまた牛に嫌われる。
公開:21/01/08 20:09
牛まつり

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