泣き虫は寄生する

　彼氏にフラれた。おまえみたいな泣き虫はもううんざりなんだよ、と。

　泣き虫の自分が嫌になった。そんな自分が情けなくてまた泣いた。
　悩んだあげくメンタルクリニックに相談すると、眼科の泣き虫外来を紹介された。診断結果は体に寄生する『泣き虫』らしい。大丈夫かこの医者。特殊な眼薬を点眼され、しばらくして目からポトンとビー玉くらいの水玉が落ちた。よく見ると、蜘蛛みたいに足が生えている。
「えっ、虫？」
「泣き虫ですね」
　泣き虫は部屋から逃げた。
「泣き虫がほんとにいたなんて」
「うまくいったな。まだ試験段階なんだ」
「あの虫どこかにいったわよ、大丈夫？」
「まあ、寄生しても害はありませんよ」
「その人、泣き虫になっちゃうわね」
　なんか心配。

　ある日、泣き虫が繁殖して人類の涙腺が崩壊している、とニュースでやっていた。泣き虫は海を渡り、海外でも増殖し始めたのだ。

　そして、全米が泣いた。