ここではないどこか

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ここではないどこか行きのバス停で僕は待っていた。5日待ち、やっと来たバスに乗り込んだ。

何日か走り、見慣れない景色をいくつも通り、あるトンネルを抜けた。そこは際限がある四角い空間だった。ただ白地に黒の模様で全方位覆われていた。それはまるで…牛みたいな。

気になり降車ボタンを押した。最後のステップに足をかけた時、運転手さんに「どうか気をつけて」と言われた。え?と聞き返す間もなく、バスは発車してしまった。

そこは草のそよぐ音、時折「モー」と鳴く声が聞こえた。ここに人はいない。ここは何だ?

突如、勢いよく白い液体が降ってきた。これは…牛乳だ!牛乳は降り続け、空間に溜まり、あっという間に僕は白い海に溺れた。上から降りてきた手に牛乳ごと瓶に入れられた僕は、ホルマリン漬けの気分を味わった。

僕は売られるらしい。どこかの店頭に並んでいる。誰が買うのか、何が待っているのか、先のことは分からない。
公開:21/01/09 14:32
牛まつり

綿津実

自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。

110.泡顔

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