歩け!牛くん

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牛は歩いていた。忘れていたが逃走中だった。
途中、子供が泣いているのに遭遇した。どうやら空腹のようなので歩くに支障がなく脂肪の少ないヒレを与えた。肉質柔らかく、消化にも良いので腹も壊さず満足したようだった。
しばらく行くと悲しげな青年に出会った。聞けば求婚したい恋人がいるが貧しくて言い出せないと落ち込んでいたのでリブとサーロインを与えた。青年は嬉しげに走っていった。
今度は一人で喋る練習をしている男に遭った。吃音症と上がり症を併発しておったので、験担ぎで舌を与えた。とりあえず病気の母に食べさせると持って帰った。
港町に差しかかる。板前が鍋を前に首を捻っていた。ひと味足りないと言う。
牛は悩んだ。儂のスネならば良い出汁が出るに違いない。だが旅ができなくなる。しかしもう口もきけないし体はすーすーする。
思い切って大鍋に飛び込んだ。
いいんだいいんだ、気にするな。
しかし板前は何か叫んでいる。
ファンタジー
公開:21/01/09 12:06
#牛まつり

晴れ時々雨

普段Twitterにて140字小説を中心に書いています。ジャンルはないです。

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