掴み取るのは自分の手で

0
1

今、私の目の前には神様と名乗る小さな狐がいる。泥だらけだったのを家に連れ帰り、風呂に入れてドライヤーで乾かしてあげて、食事を与えてすぐに、そう喋りだしたのだ。何を言っているかわからないと思うが、私もわからない。
『助けてくれた礼じゃ。何でも願いを一つだけ叶えてやろう』
「別に結構です」
『まあそう言うな。お主、想い人がおるじゃろう』
その一言に思考が停止する。何で知ってるんだ、そんなこと。
『わしは神じゃからの、大概のことはお見通しというもの。お主には助けられたからの、その想い人と両想いにしてやることもできるぞ』
神様の言葉に想いが揺れる。私の好きな人は人気者で、その分ライバルも多いから。
…でも
「やっぱりいいや」
『む?』
「そういうのは、自分でちゃんとやりたいし」
そう言うと神様は、「何じゃつまらん」と言いたげな顔をした。

『まあ、わしの力に頼らんお主なら、良い結果になるじゃろう』
恋愛
公開:21/01/09 12:02

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容