303. 空へ逃げる

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丑は困惑していた。
前の晩早くに出立し、準優勝して十二支の二番目に決定したのは良いが、三番目となってしまった寅に恨まれたのだ。
お前は薄鈍のくせにと。

優勝したネズミは神様からの勲章を受けとると素早い身のこなしで下水口へと逃げ込んだ。
だが体の大きい丑は逃げ場を失いジリジリと迫り来る寅を前に窮状していた。

「ダメだ喰われる!モー、一貫の終わりだ……」

そう思った次の刹那丑の体はふわり、と宙に舞い、そのままゆるゆると空へ昇っていった。

彼は天空からその様子を伺っていたカストルとポルックスの双子の兄弟に優しく受け止められると、ギュウっと抱き締められた。
「「これでモウ怖くないよ。僕たちの隣がずっと空いてたんだ」」
そう言うと神様に向かって問いかけた。
「「牡牛座としてここに居てもらってもいいですよね?」」

寅座は存在しない。
これが、真実の十二支と十二星座の始まりの物語──。
ファンタジー
公開:21/01/08 23:00
更新:21/01/09 02:06
明けましておめでとう! 今年も引き続きどうぞ よろしくお願い致します♪ 牛まつり

ことのは もも。( 日本 関東 )

日本語が好き♡
18歳の頃から時々文章を書いています。
短い物語が好きです。
どれかひとつでも誰かの心に届きます様に☆
感想はいつでもお待ちしています!
宜しくお願い致します。

こちらでは2018年5月から書き始めて、2020年11月の時点で300作になりました。
これからもゆっくりですが、コツコツと書いていきたいと思います(*^^*)

2019年 プチコン新生活優秀賞受賞
2020年 DJ MARUKOME読めるカレー大賞特別賞受賞
2021年 ベルモニー縁コンテスト 入選

 

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