牛の牛による牛のための主張

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新年は、その年の干支が所信表明演説をするのが古来からの慣わしだ。前に進み出た牛は、大昔の干支レースで自分の背に乗ってズルをした鼠の悪行を切々と訴えた。
「モウ我慢できません。おかげで大晦日の晩がすっかりトラウマです」
虎と馬は思わず身をすくめた。
「もうサギみたいなものよね」とウサギが言うと、猪も頷いた。
「こりゃあシシ孫々まで祟られるぜ」
「そいつはヘビーだな」と蛇が呟く。
「真の犬猿の仲はあいつらか」猿と犬が揃ってニヤリとした。
「腹がタツのは判るが、ここはひとつ穏便にな」龍が宥めようとすると、横から羊が「新年早々、メー惑極まりない」とボヤく。
「トリあえず謝れば?」と酉が促すと、鼠はふんと鼻を鳴らした。
「誰もチュー裁してくれないんスか?下らない争いは御免っすよ」
堪忍袋の尾ならぬ緒が切れた牛は、ぎろりと鼠を見据えた。
「やる気か?手荒な真似は好きじゃないが、売られた喧嘩はcowぜ」
その他
公開:21/01/07 13:41
更新:21/01/09 16:59
牛まつり そるとばたあ様・むう様主催 #105

秋田柴子

2019年11月、SSGの庭師となりました
現在は主にnoteと公募でSS~長編を書いています
留守ばかりですみません

【活動歴】
・東京新聞300文字小説 優秀賞
・『第二回日本おいしい小説大賞』最終候補(小学館)
・note×Panasonic「思い込みが変わったこと」コンテスト 企業賞
・SSマガジン『ベリショーズ』掲載
(Kindle無料配信中)

【近況】
 第31回やまなし文学賞 佳作→ 作品集として書籍化(Amazonにて販売中)
 小布施『本をつくるプロジェクト』優秀賞

【note】
 https://note.com/akishiba_note

【Twitter】
 https://twitter.com/CNecozo

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