2020戦争

戦争が起きた。 どこの国がどこに攻撃したのかはわからない。が、瞬く間に戦火は広まった。攻撃から逃れるため、人々は息を潜めて暮らさざるをえなくなった。 偉い人達は右往左往するばかりでまるで役に立たない。 人々の暮らしは荒れ、食糧や生活用品が不足し、買い占めや盗難あるいは高額で売りつけるような輩が出るようになった。 他人に対してやさしさや思いやりを持つ余裕もなくなり、とにかく自分だけは助かりたい、他人などどうでもいいと考える者がどんどん増えた。倒れる者も日ごとに増え、医者や看護師は足りなくなり、挙げ句の果てに学生まで駆り出されるようになった。

だが、ある日突然戦争が終わり、襲撃される心配がなくなった。人々は心身共に平穏を取り戻した。

けれど誰も反省はしない。 国のトップも国民も、酷い目に合ったと被害者面をしても、自分の行いは省みない。「あの時は仕方なかった」と言い訳だけを口にするのみだ。