元彼のにおい
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埼京線で男性とすれ違いざまに覚えのある香水を感じ、身を強ばらせながら振り返ると、それが元カレではなく見知らぬ学生だったことにユイは安堵した。と同時に驚嘆やら失意やら懐古やら、様々な感情が綯いまぜになって胸を締め付けた。
ともかく、一瞬でも胸が高鳴ったその相手が少年だったのだ。
私も大人になった。
もう十年になる。
彼はユイにとって初めての男だった。その頃の男と、先の少年は同い年くらいだろう。
ユイは、どうやら結婚したらしい彼の生活に思いを馳せた。
どのような家庭を築いているだろう。出版社で働く良きパパに違いない。
私が彼の子供を産んでいたとしたら…。
決して切望しているというわけでないが、なかなか妄念は拭えずにいた。
気が付くともう赤羽駅で、急いで降りた。明日はいつもより早起きしなければならない。娘の運動会のお弁当を作らなければ。歩みを早め、交差点を右に曲がった。
ともかく、一瞬でも胸が高鳴ったその相手が少年だったのだ。
私も大人になった。
もう十年になる。
彼はユイにとって初めての男だった。その頃の男と、先の少年は同い年くらいだろう。
ユイは、どうやら結婚したらしい彼の生活に思いを馳せた。
どのような家庭を築いているだろう。出版社で働く良きパパに違いない。
私が彼の子供を産んでいたとしたら…。
決して切望しているというわけでないが、なかなか妄念は拭えずにいた。
気が付くともう赤羽駅で、急いで降りた。明日はいつもより早起きしなければならない。娘の運動会のお弁当を作らなければ。歩みを早め、交差点を右に曲がった。
その他
公開:20/01/07 20:00
更新:21/01/12 16:30
更新:21/01/12 16:30
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