冷えた清酒
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女川でひっくり返った交番を背負い、湾を眺めながらコンビニで買った発泡酒を流し込むと、いつもより苦味を強く感じた。
ゆらゆらと穏やかな電車に揺られること凡そ二時間。仙台駅を出て商店街を通り抜けた所にあるホテルに戻り、一休みした後、夜の街へ繰り出す。旅先で偶見つけた居酒屋にふらっと…という粋な振る舞いは出来るはずもなく、入念に下調べした店に、あたかもちょっと気になったもので、風の表情を作りつつ「源氏」の暖簾をくぐった。
そこには綺麗に着物を纏い、上品に店を捌く、まさに絵に描いたような妙齢の女将がいた。奥の調理場からつまみを受け取り、客へと通す。
程よく薬味の乗った冷奴や、少し癖の強い糠漬け。なんて事ない品が、薄暗い店内で輝いて見えた。
透明な日本酒の奥に、女川の墓場を見た。あの頃の海を、そして復興した街を見渡せるよう、高台に立てたらしい。
一口一口噛み締める度に、仙台の夜は更けていった。
ゆらゆらと穏やかな電車に揺られること凡そ二時間。仙台駅を出て商店街を通り抜けた所にあるホテルに戻り、一休みした後、夜の街へ繰り出す。旅先で偶見つけた居酒屋にふらっと…という粋な振る舞いは出来るはずもなく、入念に下調べした店に、あたかもちょっと気になったもので、風の表情を作りつつ「源氏」の暖簾をくぐった。
そこには綺麗に着物を纏い、上品に店を捌く、まさに絵に描いたような妙齢の女将がいた。奥の調理場からつまみを受け取り、客へと通す。
程よく薬味の乗った冷奴や、少し癖の強い糠漬け。なんて事ない品が、薄暗い店内で輝いて見えた。
透明な日本酒の奥に、女川の墓場を見た。あの頃の海を、そして復興した街を見渡せるよう、高台に立てたらしい。
一口一口噛み締める度に、仙台の夜は更けていった。
その他
公開:21/01/08 20:00
更新:21/01/16 01:13
更新:21/01/16 01:13
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