ふしぎなポケット(夢にまで見た物体増殖ポケット)

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ポケットの中にはビスケットがひとつ。
なぜなら俺は貧乏だからだ。誰か夕飯を恵んでくれ。ステーキとは言わない、エビフライでいい。誰か……。

ポケットを たたくと
ビスケットは ふたつ

そういえばこんな歌があった。
この際ビスケットでいい。俺は思い切りポケットを叩いた。ビスケットは二つに増えていた。

――実在したのか、夢にまで見た物体増殖ポケット。

俺はステーキ屋に駆け込み、一番高いステーキを頼んでポケットに突っ込むと無我夢中で叩きまくった。
周囲の人間は変人を見る目で俺を見たが気にしない。俺はソースが溢れるのも気にせず叩きまくった。

ポケットから出てきたのはぺしゃんこのステーキと、公園で中学生に恵んでもらったビスケットが二枚――そういえば最初から二枚もらっていた。
俺は店主に愛想笑いして店を出た。

たたいて みるたび
ビスケットは ふえる

そんな不思議なポケットが欲しいものだ。
SF
公開:21/01/07 21:16

社川 荘太郎

仕事をしながら1日1時間小説を書く二児の父です(ショートショートや短編、稀に中編)。
twitter⇒https://twitter.com/Ln4Xy

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