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倉庫内のドラム缶に身を隠し、二人はそっと、様子をうかがう。
「組織のボスが隠れているにしては、また随分とみすぼらしいところじゃないですか」
青年が言った。
「しっ」
女刑事は苦虫を噛んだような表情で制した。
見覚えのある、いや、脳裏に焼き付けた顔の男が、視界の中に動く像を結ぶ。拳銃を握る手に汗がにじむ。
「何をする気でしょう?」
麻薬シンジケートを牛耳る親玉は、ゆっくりと伸びをし、それからおもむろに、ふくよかな体を揺らし始めた。
「なっ」
男は小さなスマホの動画に合わせ、曰く言い難い独自のステップを刻む。ダンスが終わると、息を整えてから小さな声で呟いた。
「あなたのことを愛している」
思わず絶句する刑事。
「フ、フラッシュモブからの、告白……?!」
見てはいけないものを見てしまった。
「作戦ですよ」
「あなたが行きなさいよ」
二人は押し問答の末、再開された練習内容にツッコミを入れ始めた。
その他
公開:20/10/29 07:00

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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