Toast

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 みすぼらしい恰好の少女が、姫君の乗る馬車に向かって叫んだ。
「お願いします! 家族がお腹を空かせて苦しんでいます。どうかパンをお恵み下さい…」
 姫は馬車を降り、痩せこけた少女を見つめて困惑した。
「…困りましたわ。私はパンを持っていませんの」
 少女は大粒の涙を流し、神に祈るかのような姿勢で指を組んだ。
「お願いします。お腹がペコペコなんです…」
 姫は困り果て、「どうしましょう…」と考え込んだ。少女は泣き続け、姫は考え続けた。

 やがて――
 姫にとあるアイデアが浮かんだ。
「そうだっ! パンが無ければ作ればいいのですっ!」
 呆気に取られる少女に向けて、姫は言い放った。
「パンの作り方は知らないけれど、Toastなら作れますわ。材料は…」

 翌日、少女の家族の元に、大きなToastが贈られました。家族はそれを、泣きながら――お肉のような味のそれを、泣きながら、食べ続けました…。
ホラー
公開:20/10/29 00:35
悪魔の寓話 Toast 焼いて加熱したパン

Sees

ショートショート好き。
得意ジャンルはホラー。
座右の銘は『清く正しくいやらしく』。
好きな書籍は『悪魔の辞典』と『悪魔の寓話』。
制限400字という発想に感銘。
コメントとフォローはできるだけ返します。

楽天ブログにて『株式会社SEES』の名でショートショートと短編小説掲載中。
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よろしければ、ぜひ。そして、たまに呟きます。
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さて、今日はどんな事件が起きることやら……。



 

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