ある御仁の本音

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『正義』について和尚に問うたことがあるが、てんで理解できない代物だった。
だがなんとなく『言い訳に使えるなぁ』と思ったりもした。

今、村上という者が頭を下げている。
彼は、自分の土地を南のほうの大領主に奪われた。
取り返そうにも兵と金が無く、たまに使者を介し遣り取りしていた私を頼り、落ち延びてきたという。
縁の薄い輩が何をホザくかと内心罵るも、彼に降りかかった災難は、すぐ私の下にもやって来る。
面白い戦が出来そうだ。その大領主とやらと一戦交えてみたい。
しかし、家来たちは乗り気ではないようだ。呆れ顔がそこかしこに浮かび上がっている。そして一部は顔色が非常に悪く、私を戦々恐々とした様子で窺っている。
すまない、今回もだ。
「村上殿の頼み、相分かった。この上杉謙信入道が“正義の名に賭け”貴殿の領地を取り返そう」
いつもの言い訳を使った。
村上には悪いが、私の家来として存分にコキ使ってやろう。
その他
公開:20/10/28 20:58

加賀守 崇緒( 猫屋敷 )

気まぐれなハチワレ猫です。
頭抱えながら文章を考えてます。
スイカと芋と肉と魚に、お米とお酒、ブドウが好き。
よろしくお願いします。

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