マッチの木

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郵便受けを開けると一枚の葉書が届いていた。赤と橙のグラデーションが美しい手のひら大の葉書。あぁ、今年もこの季節か。私は早速葉書の裏に返事を書いて公園へと向かう。マッチの木の前で、私は葉書を両手に挟んで合掌し目を閉じた。祈るうちに徐々に消えてゆく葉書の感触。今日は28日。返信期限は31日だから間に合ってよかった。秋も深まり、風が吹くたびに、公園の木々の葉っぱは落ち葉となって散ってゆくのに、マッチの木だけはどんどんとその葉を増やしている。

10月31日。ご先祖さまへ返事の書かれた沢山の葉書を茂らせたマッチの木のまわりに地域に住む人々が一堂に会し、沈む夕日をうけて真っ赤に染まる葉を静かに眺めていた。
その夜 -
ブウォッ。葉の一枚一枚に火が灯りチラチラと燃え出して、やがてゆらめく大きな一つの炎となった。



翌日 ー
全ての返事を送り終え丸裸になったマッチの木の枝の隙間から青空が覗いている。
その他
公開:20/10/28 20:22
更新:20/10/29 02:04

マーモット( 長野県 )

初投稿は2020/8/17。
SSGで作品を読んだり書いたり読んでもらえたりするのは幸せです。趣味はほっつき歩き&走り(ながらの妄想)。
 

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