能面。

「深夜に自動販売機でコーラを買うと、能面が出て来る」
そんな都市伝説が街に存在する。が、そもそも、この街には朝が来ない。午前午後関係なく、ずっと夜だ。どこからが深夜で、そうじゃないのかが曖昧で、全くもって信憑性がない。
それでも気にならないわけでもないので、自分が深夜だと思う時間に街へ繰り出した。
暗くて先の見えない路地裏の隣に、妖しく光を放つ自動販売機を見付けた。
コーラがない心配はしていなかった。奴はどこにでもいる。問題はそこじゃない。缶か、ペットボトルか。はたまた、どちらでもいいのか。
僕がこの話を知るきっかけとなったオカルト関係のムック本には、そこまで書かれていなかった。
取り敢えず、160円を入れ、ペットボトルの方を購入した。
ガタン、と重量のある何かが取り出し口に落ちた。
出て来たのは、コーラだった。
「あ」
視界の隅。
路地裏から顔を覗かせているのは……。