We can not back

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一体何が起きているんだろう。
波打つ視界に横転した車が揺蕩っている。
赤いランプがくるくると光を振りまいている。
誰かが私に話しかけている。
「あんた、おい、しっかりしろ」
人が多い。目の前にいるのは、見知らぬ初老の男。
私は返事を伝えているつもりで、実はただ頭の中に音のない声が反響しているだけだった。
ゆっくりと焦点が結ばれていく。誰かがすぐ目の前に倒れていて赤黒い血を垂れ流している。ぴくりともしない。
「だれかこっち、助けてくれ」
男に好感を持ったが、私は突然に吐いた。何を考える暇もなかった。男が怪訝な顔で振り返る。
胃液に混じった紛れもないアルコールの匂い。うんざりするほど何度も吐いて、やがて何も出なくなった。ビブラートの震えみたいに胃が痙攣してメロディーのない歌が聴こえる。
タンカが運ばれてきて記憶がフラッシュ・バックすると、私はすべてが既に終わってしまっていることを理解した。
その他
公開:20/10/30 07:00
更新:20/10/30 05:44

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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