魚の幽霊
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僕が到着した頃には、ジェフの家の居間にはすでにハシシの紫煙が充満していた。
トロンとした目で紙巻を咥えている屈強な男たちに手渡され、僕もそれに火をつける。
濁りきった部屋の中で、唯一クリアなものがあるとすれば壁際に置かれた水槽だった。中身は入っていない。そこにあるのは切り取られた空間だけだ。
「あの水槽はなに?」
「魚の幽霊を飼っているんだよ。夜になると降りてくる。銀色の光を纏って」
ジェフは恍惚とした表情でそういった。僕はフーンと相槌を打つ。のっぺりとした倦怠が体を巡るのを感じていた。そうして乱痴気騒ぎに加わり、いつしか眠ってしまった。
その夜、魚の幽霊を見た。
水槽に漂っていた銀色のそいつは、いつしか部屋中を遊泳していた。ベッドにはジェフが裸になって鼾をかいている。魚はその横腹にスッと潜り込んでいった。ジェフはくぐもった呻き声を上げた。
あの日以来、ジェフは行方が知れない。
トロンとした目で紙巻を咥えている屈強な男たちに手渡され、僕もそれに火をつける。
濁りきった部屋の中で、唯一クリアなものがあるとすれば壁際に置かれた水槽だった。中身は入っていない。そこにあるのは切り取られた空間だけだ。
「あの水槽はなに?」
「魚の幽霊を飼っているんだよ。夜になると降りてくる。銀色の光を纏って」
ジェフは恍惚とした表情でそういった。僕はフーンと相槌を打つ。のっぺりとした倦怠が体を巡るのを感じていた。そうして乱痴気騒ぎに加わり、いつしか眠ってしまった。
その夜、魚の幽霊を見た。
水槽に漂っていた銀色のそいつは、いつしか部屋中を遊泳していた。ベッドにはジェフが裸になって鼾をかいている。魚はその横腹にスッと潜り込んでいった。ジェフはくぐもった呻き声を上げた。
あの日以来、ジェフは行方が知れない。
ホラー
公開:20/10/27 07:08
平成元年生まれ、最近はショートショートあまり書いていませんでした汗
ログインできてよかったぁ…
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