ノー・タイム・トゥ・ファイト

16
7

整然と並んだ数え切れないほどの棚。びっしりと詰め込まれた銃器が、黒いボディを白色光の下に晒している。
スーツ姿の男が、かつかつと革靴を鳴らしてやって来る。
「とびきりのを頼む、やっかいな相手のようだ」
彼が言うと、博士は満面の笑みを作った。
「心配御無用」
見慣れた愛車が置かれている。回を重ねるごとに特殊装備がグレードアップされてはいるが。
「また随分とシンプルな内装だね、このマイクは……?」

爆風の中、ジェームズは感慨もなくシートに腰掛けていた。
すべては終わった。新生アストンマーティンはAIによる自動戦闘車で、ジェームズはただ、オッケー・マーティン、に続く命令文を読み上げるだけでよいのだ。

液晶画面には次の標的がすでにマークされている。タップすると、小型ドローンの射出される音が微かに聴こえた。

その夜、バスローブ姿のジェームズに、シチリアの秘密結社が壊滅したとの知らせが入った。
SF
公開:20/10/28 07:00

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容