甘いカフェオレの効用

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不安な私は温かいカフェオレをつくり砂糖をたっぷり入れて飲み干した。しかし、仄かに温もった手はみるみるうちに冷え切ってしまった。冷たい指先で涙目を擦る。暗い庭先に出て、枯れた薔薇の棘だらけの蔦に絡まる鴉を逃がしてやり、止まらない涙を蜥蜴に飲ませた。慈悲を具現化しても、どこか嘘くさく、そんな自分が汚らわしく、白いブラウスの裾を引きちぎり、手をゴシゴシと擦る。何も取れない。庭に突っ立って哀しみに暮れていると、もぞもぞとしたものを腹に感じた。蟻たちが私の足からふくらはぎ、太ももを伝い臍に潜り込んでいた。その蟻の鎖をそっと引っ張ってみると、臍から嘆きの塊が出てきた。恐る恐る触れてみると、砂のようにさらさらと崩れ、どこからか吹く風に攫われていった。蟻は先程私が飲んだ腹のなかのカフェオレの甘い匂いに誘われたようだ。そっと土に返して礼を言う。重苦しい哀しみがすっかり抜け切って、体が温もりを取り戻した。
ファンタジー
公開:20/10/26 22:21

夜野 るこ

  夜野 るこ と申します。
(よるの)

皆さんの心に残るようなお話を書くことが目標です。よろしくお願いします。

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