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散歩中、空き地の隅に蛍が飛んどった。
十月に珍しなぁて思てたら、蛍やのぅてマツヨイグサの花やった。
宵待草て呼んだんは、竹久夢二やったかな。――暮れて川原に星一つ。こない景色を夢二も見たんかも知れん。ほんわり浮いた黄色つまんで、思い直して手ぇ引いた。
うちが小さい頃、ここに家があった。同い年の子がおって、暗なるまで一緒に遊んだ。小学校卒業してそれっきり、今ごろ何処で何しとるんやろ。
「待てど暮らせど来ぬ人の、宵待草のやるせなさ。今宵は月も……」
せめて『くら』したろ。使わんかった傘差して、影作って。
――あほらし。子供やあるまいに。五分もせんと除けた傘の向こう。
周りはすっかり夜やった。
宵待草がほんわり光って、一つ。もう一つ連れ立って、ふぅって空へ浮かんで。
「……満月」
「十三夜や」
よう知ってて全然知らん声。
「深草?」
「久しぶりやな、小町」
月明かりに、長い影が手ぇ上げた。
十月に珍しなぁて思てたら、蛍やのぅてマツヨイグサの花やった。
宵待草て呼んだんは、竹久夢二やったかな。――暮れて川原に星一つ。こない景色を夢二も見たんかも知れん。ほんわり浮いた黄色つまんで、思い直して手ぇ引いた。
うちが小さい頃、ここに家があった。同い年の子がおって、暗なるまで一緒に遊んだ。小学校卒業してそれっきり、今ごろ何処で何しとるんやろ。
「待てど暮らせど来ぬ人の、宵待草のやるせなさ。今宵は月も……」
せめて『くら』したろ。使わんかった傘差して、影作って。
――あほらし。子供やあるまいに。五分もせんと除けた傘の向こう。
周りはすっかり夜やった。
宵待草がほんわり光って、一つ。もう一つ連れ立って、ふぅって空へ浮かんで。
「……満月」
「十三夜や」
よう知ってて全然知らん声。
「深草?」
「久しぶりやな、小町」
月明かりに、長い影が手ぇ上げた。
ファンタジー
公開:20/10/28 19:00
散歩道で見た
シーズン3‐⑥
宵待草と月の通い路
※2020年の十三夜は
10月29日だそうです。
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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