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「主文、被告人を無罪に処する……」
 よしっ。俺は心の中でガッツポーズをした。金をケチらず著名な人権弁護士を頼んだのが功を奏したのだ。最高裁までもつれるとは思わなかったが、後でがっつり国家に賠償してもらおう。
 弁護士がやってきて「難しい裁判でした」と微笑んだ。
「あんた、拘置所から私物取ってきてくれよ」
「いえ、一緒にそちらに戻ります」
「嫌だね。二度と戻らねえ」俺は弁護士の胸倉を掴んだ。
「きちんと判決をお聞きにならなかったようですね」
「聞いたさ。無罪だろーが」
「その後です。『この裁判が確定してから50年間その執行を猶予する』」
 無罪の執行猶予?
「あなたは無罪を勝ち取りましたが、その無罪は50年間猶予され、推定有罪が適用されます」
「そんなバカな……」
「ただ、具体的な罪は確定していないので拘置所の付帯施設で50年間過ごしてください。それと、無罪なので再審請求もできませんので」
その他
公開:20/10/28 16:32
更新:20/10/28 16:56

新出既出20( 浜松市 )

新出既出です。
twitterアカウントでログインしておりましたが、2019年末から2020年年初まで、一時的に使えなくなったため、急遽アカウント登録をいたしました。過去作は削除してはおりませんので、トップページの検索窓で「新出既出」と検索していただければ幸いです。新出既出のほうもときおり確認したり、新作を挙げたりします。どちらも何卒よろしくお願いいたします。
自己紹介:「不思議」なことが好きです。

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