怪異実況

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 怪異スポットに来た三人のうち、携帯電話のカメラを構えた一人が口を開いて数秒の事だった。
「Kさん、アナウンサーの根性見せてくれよ。じゃ、録画……」
 鈍い金属音。
 K氏の眼前、カメラマンの頭が吹っ飛んだ。エアガンを乱射して抵抗したもう一人の連れも、頭上に金属バットを叩きつけられ昏倒した。
「本物!?」
 深夜、一年以上使われていない野球場の付近に出現する怪異。コウモリの翼を持つ怪人、金属バットマン。伝説上の存在が目の前にいた。
「どっ……どうすれば!」
 あいにく予算不足により、ハッカアロマ、高照度照明、野球ボールといった対策用の品は持ち合わせはない。
 Kはせめて自分らしく死のうと決めた。
「今、バッターボックスに立ちました。狙うはホームラン。今、バットを大きく振り被って――」
 実況し始めた瞬間、彼の動きが止まった。満足げに頷くと、世闇へ消えていった。
「やっぱり、思いやりが最強」
SF
公開:20/10/27 22:53
更新:20/10/27 23:17

ゆぅる( 東京 )

お立ち寄りありがとうございます。ショートショート初心者です。
拙いなりに文章の面白さを追求していきたいと思って日々研究しています。
よろしくお願いします!

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