ブタのピグー

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「明日はご馳走だぞ。このブタを食うんだ」
「え、やだよ。ピグーを殺さないで!」
涙を浮かべる息子を父は優しく諭した。
「人間は他の命を殺して食べないと生きていけないんだ。…わかるだろ?」
息子は俯いた。
「さ、もう家に戻ろう」
だが息子は動こうとしなかった。
何度声をかけても、足に根が生えたように動かない。
「おい、行くぞ」
「だったら僕を食べて!父さんが僕を殺して食べてよ!」
「何を馬鹿なことを言ってるんだ」
息子はダンッと床を踏みつけた。
「ピグーを殺して食べなきゃいけないなら、僕はこんな命いらない!僕なんて死ねばいいんだ。父さんが殺してよ。…この手も、足も、ちゃんと残さず、食べてね」
「馬鹿野郎!そんな事できるわけないだろ!」
父は強情な息子を直視した。
小さく溜息をつく。
「ピグーは寿命まで、お前が責任を持って面倒を見る。…できるか?」
息子はぱっと明るくなった。
「うん…!」
その他
公開:20/10/27 21:37

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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