かりゆトラック

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祖母の事を思う時、心に浮かぶのはあたたかい縁側。村は温泉地でどの家の縁側にも足湯があり、ご近所さんがひっきりなしに訪ねてきては一緒に足湯を楽しんでいた。
ちょっとお湯かしてくださいな。
そう言っておじゃまする「借湯(かりゆ)文化」のおかげか村人達はみんな家族のようだった。
七回忌で久しぶり帰った村は、活気が失われ冷たい灰色になっていた。楽しい祖母との時間までも飲み込んで遠い思い出にしてしまうような色。
あたたかい村を取り戻したい!
そう思い、私は村に戻ることにした。まずは軽トラを購入。歩くのが辛い高齢者でも家にこもらず移動できるように。そして荷台には掘りごたつ型の足湯を設置。言うなれば、移動オープンカー風の足湯屋台。変わる景色を楽しみつつ雑談しながら足湯であったまれる仕組み。
私は今、祖母の縁の地で軽トラを走らせている。焼き芋屋台みたいに歌いながら。
かりゆ~、かりゆ、あったか~い、ゆ~♪
公開:20/10/25 19:28

マーモット( 長野県 )

初投稿は2020/8/17。
SSGで作品を読んだり書いたり読んでもらえたりするのは幸せです。趣味はほっつき歩き&走り(ながらの妄想)。
 

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