縁魔大王

天国か地獄を決めるのはもう嫌だ。
この場で死者が語る生前の活動に、ワシの独断と偏見を加味して閻魔帳に判を押すのは沢山だ。
考えてみれば生前に仏面が隠れて悪事を重ねたかもしれないし、仏頂面が匿名で善行を尽くしたかもしれない。ワシは何でもお見通しではない！
そうだ。天国と地獄をなくして今後は死者に来世を与えよう。何が天国で何が地獄かは人それぞれだから公平にワシが決める。あ、前世の職に何か縁のある来世なら深く考えず判を押せるぞ。今から縁魔大王に改名だ。
花屋は花、銀行員は硬貨、医者はメスという風に判を押していった。だが段々良心の呵責を感じ始めた。そこへ或る死者が現れ前世を聞いた時、ワシは安堵した。もういいや。縁魔帳に判を押した瞬間ワシは消え、目前の男が縁魔大王になった。男の前世は裁判官だった。
一方、ワシは生き地獄と呼ばれる現世で円満大王という芸人になり、笑い溢れる天国の領土を作る為に活動中だ。