死んだ爺さんの弟の息子

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死んだ爺さんの弟の息子が私の会社の近くで特許事務所を開いているというので、一度会うことになった。
かつて死んだ爺さんの弟と死んだ爺さんの娘が一緒に飯を食ったという鰻屋をすすめられ、仕事の合間にそこへ向かうことにした。死んだ爺さんの娘とは、つまり私の母親だ。
死んだ爺さんの弟の息子は先に着いていたようで、店に一人、昼間から瓶ビールを手酌していた。てっきり私の母親と同じくらいの世代だと思っていたが、私と同世代のようだった。男はビール瓶片手に小さく頭を垂れる。
「死んだ爺さんの娘のお子さんですか?」
「死んだ爺さんの弟の息子さんですね?」
私は母親に一つ頼まれていたことがあった。それは爺さんがどうして死んだのかを確認して欲しいと。すると、死んだ爺さんの弟の息子は答えた。
「実は僕もそれを頼まれていました」
店主は私のグラスを置いて呟いた。
「二人とも口が固い割に疑り深いや」
ミステリー・推理
公開:20/10/26 20:48
更新:20/10/31 09:59

puzzzle( 神奈川19区 )

作文とロックンロールが好きです。
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