やけ食い

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信号の光がとろけていく。
できるだけ上を向いておこうと思ったのに、涙は溢れ始めた。
暗い夜道、誰が見ている訳でもない。
名残の秋風に吹かれて濡れた頬は冷える。

『ごめんね。ありがとう…さようならだね』
『お前のこと、好きじゃなかったわけじゃないよ』
『馬鹿だね。好きだったって言葉があるのに、そんな言い方して』
『好きさ。今だって』

桜が散りきった季節に始まった。
日差しが強い頃、彼の引越しが決まり少しづつ陰りができた。
紅葉を待たずに、私達は手を離した。

おいで、も。
いきたい、も。
私達は言わなかった。
お互いの人生を100を守る為に、相手から足りない分を奪うことが出来なかった。

帰り道には滲んだ星空や街灯、スーパーの光。

癖になっている2人分の甘いもの。
今日はそれを1人で食べるんだ。
悲しさと思い出と一緒になって、きっと私は胃もたれするだろう。
恋愛
公開:20/10/26 18:25

雨森れに( 東京 )

色合いの綺麗な物語を紡ぎたい。
シーンごと切り取られた刹那。
不思議、恋愛、ファンタジー、怪談、純猥談などをチラホラと。
中身はお酒が好きなアグレッシブ。

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