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大声で目が覚めた。
まったく、いい加減にしろ。
連日連夜、私の目は隈だらけだ。

やっと落ち着いたと思ったら、二週間と経たずにもうこれだ。体力がもたない。
「うるさい」初めは小さく低い声。感情に合わせて、声は次第に高く、大きくなる。

「うるさいっつってんだろ!」
涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、娘は言った。
「お母さんが、死んじゃうの」
なんなんだよ。私はお前に殺されそうだよ。

翌朝保育園に向かって歩いていると、娘が突然立ち止まった。
何度言っても、服の裾を掴んで動かない。
「いい加減にしてよ! なんの恨みが……」
そのとき向かう先の通りで、四つ角のコンクリート塀にトラックが突っ込んだ。

私は反射的に娘を抱きしめ、不意に思い出した。

私もかつて母に予言したのだ。母は、私のことを不気味がり家を出ていった。

小さな頭を抱えた腕に、力を込める。
私の子。
そう、微かな声で呟いた。
ファンタジー
公開:20/10/27 07:00
更新:20/10/26 22:33
コンテスト

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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