えんあ

何でも知ってると社内で噂の開発部のK君。その彼とエレベータ―で一緒になったのできいてみた。「『えんあ』って何ですか？」困った顔で視線を宙に泳がせるK君。そりゃそうだ。「えんあ」なんて言葉はない。私が勝手に作ったんだから。と、K君がこちらに向き直り話し始めた。「『えんあ』の元々の意味は、えあ。つまり空気。間の『ん』は気持ちの高まりを表れ。例えば『ピザが食べたいです』より『ピザが食べたいんです』の方が気持ちが強いでしょ。」適当なことを言って。怪しいぞ、この男。「つまりね『えんあ』は、あぁ、この人ともっと一緒に空気を共有したいって気持ちが高ぶった時に表れる空気のこと。爽やかでいて暖かく、それでいて酸っぱい感じの。」説明を聞きながら、まさにそんな空気を感じて不覚にもストンと納得してしまった。

急な結婚を驚く友人たちに、私はあの日の様子を思い出しながらこんな風に説明するのだった。
えんあってね…。