ロードローラーに潰された男

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「私、先日、ロードローラーにつぶされましてね」
 確かに男はわずかに1センチほどしか厚みがなく、パン生地のように均一にうすく延ばされていた。店主は最初こそ驚いていたが、気を取りなおして男を問いただす。
「いや、そのあんた……それは、平気なのかい?」
「意外と人間慣れるものでしてね。これはこれで結構快適なんですよ」
 男は口を開けて笑った。
「そうかい……まあ元気なら別にいいけどよ。それで……結局、今日、あんたは何をしにうちに来たんだい?ガラス細工をお求めかい?」
 店主が言うように、この店は工房併設で手作りの吹きガラス細工を作っている店なのだ。
「いやそうではないんです。さっき私、この体に慣れてきたって言ったでしょう?ただ、慣れてきたのと同時に、前の体に未練も出てきましてね。それで――物は試しってやつなんですが、おしりからちょっと刺しこんで、一度、吹いてもらえないかなと……」
その他
公開:20/10/24 17:15
更新:20/10/24 20:57

たけのこ

たけのこです。
諸事情によりきのこたけのこ論争には加担できません。

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