オフィスで

ぶつぶつと今朝も穴を掘るためにオフィスに行く。シリアルを忙しくかき込むと家を出て満員電車で揉まれる。
オフィスで半日、そこそこの穴を掘って同僚とランチに出て無駄話をする。ランチのあとでぶらぶらと歩いてオフィスに戻る。
ふたたび穴に向かう。
午前中に掘った穴の周りに積もっているのは退屈だ。昼からは退屈を細かくちぎって穴に入れる。退屈を入れたら穴を埋める。
ひと通り埋めるとだいたい暗くなる。

ところでぶたが逃げたらしい。メールは三日前。逃げたのは想定外。各自の穴を点検せよと指示があった。帰宅途中の通勤電車のなかでそのことを思い出した。明日の朝に穴をみることにしよう。

その晩、夢にぶたが出てきた。ぶたは穴にはいない。ぶたは逃げた。鼻唄をうたいながら逃げた。ぶたの行き先はわからない。
ぶたは穴に興奮して、それから退屈して逃げたにちがいない。

次の日の朝、オフィスでぶつぶつと穴を掘りはじめた。