痛みよあれ、と神は言った

始め　人も動物も痛みを知らなかった
だから死は軽いものだった

ある日神は言った
『痛みよあれ！』
全ての人と動物に痛みの感覚が存在することになった

この時　半数の者が深い傷を受けていたので　強烈な痛みに襲われた
痛みによる叫びと鳴き声の時代が始まったのだ

痛みのない時代　死は苦痛なく力が抜けていき息絶える
それだけだった
その為に治療の概念も　癒しの概念もなかった
助けてくれという叫びも助けてあげてという哀願もなかった

人々は治療も知らず癒しも知らないままそれらを探した

少しずつ見つかっていった
才能ある者達が数々の薬草を見出し　治療に役立たせた
心を癒す方法も優しい人々が創り出していった

人々も動物も　家族や仲間の死や苦しみを何倍にも感じ取るようになった
それ自体が苦痛だった

無益な殺生は激減した

のちに愛が生まれた時　すでに愛は痛みを知っていた