黒魔術の敗北

2
6

櫻子は魔法陣を描き終わると、篝火を灯した。
夜の公園が、煌々と照らされる。後は供物を捧げれば、世界を滅ぼす魔王が召喚されるはずだ。
櫻子は鍋を手に取る。子羊の肉(近所のスーパーで買った)、月桂樹の葉(母の調味料入れから拝借)、イモリの干物(は気持ち悪いので干し椎茸)、山羊の生き血(入手できなかったのでトマトジュース)が、ぐつぐつと煮えていた。
祭壇に鍋を置く。⚪︎ックオフで買った黒魔術書によれば、まもなく魔王が出現するはずだ。

——魔王様、この世界を滅ぼしてくださ
「櫻子じゃん!何してんの?」
派手なギャル——クラスメイトの江藤真美が立っていた。供物を人差し指で掬う。
「うっま!BBQしてんの?混ぜてよ!」
「あ…あ…」
真美はスマホを取り出す。程なくして仲間が集まり、パーティが始まった。
魔王の召喚は成功していた。しかし、パリピが苦手な魔王は、そのまま人知れず地獄に引き返して行った。
青春
公開:20/10/24 11:31

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容