トウノコ(つづき)

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スカイツリーの周辺で採れたトウノコを持ち帰った。
じいちゃん曰く「新鮮なトウノコは生で食べるに限る」らしい。
ばあちゃんはトウノコを慣れた手つきで調理し、刺身にしてくれた。トウノコに合う特製のタレで食べるとおいしいらしい。
ひと口食べてみると、シャキシャキならぬガリガリした食感が変わっていて珍味だ。鉄分が豊富に含まれているらしい。
すると、次の瞬間に舌がピリピリならぬビリビリした。スカイツリーが電波塔だけあってトウノコも微量に電波を発しているせいらしい。
ばあちゃんがトウノコのアク抜きならぬ電波抜きをし忘れたようだが、食通はそのビリビリを好むらしい。
そのあとも、煮物や焼き物、天婦羅、炊き込みご飯など、日本料理をベースとしたトウノコのフルコースを、ばあちゃんが腕によりをかけてごちそうしてくれた。
じいちゃんの家から帰る際、ばあちゃんがトウノコの皮で包んだおむすびをおみやげに持たせてくれた。
その他
公開:20/10/25 07:03
『とってもふしぎな創作ドリル』 「ストーリー14 トウノコ」 スカイツリー 刺身 電波塔 アク抜き 煮物 焼き物 天婦羅 炊き込みご飯

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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