猫又の恩返し

　人に命を助けられた猫又。子孫に恩を返すと約束し、500年もの間、体を癒すため眠りについた。
　そして現代、女性の姿に化け、ついに現世へ降り立った。
「えっ……嘘！？」
　ここはタワーマンションの最上階。シンプルと合理性を極限まで突き詰めたような部屋。
「本当に子孫のZさんですか？」
「言い伝えで聞いております」
　Z氏はブログとSNS運用によって年収億を稼ぐ成功者。
「恩返しに来たんですが……」
「お金は足りてます。仲間もいます。天職に就き、毎日楽しくて仕方ありません」
　分単位で生産性を追求する生活スタイルに、猫又が介入する隙などない。彼なら、どんな夢も自力で掴み取るだろう。
「余計な、お世話でしたね」
　猫又が頭を抱えて帰ろうとすると、Z氏が引き留めた。
「でも、私が貴方できることなんて！」
　Z氏は首を横に振り、顔を赤くして口を開いた。
「実は、ペット欲しくて――」
「にゃー！？」