ご自由に傷付けて。

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「俺は善でも悪でもない。ただこうやってずっと待っている。この街の人間が俺を傷付けるその時を。街に朝が来なくなってから、住人は夜に侵され、悪意に染まった。犯罪者が街を牛耳っている。でも、待て。君は見たことあるか? 正気の人間が狂気に走る瞬間を。答えは聞くまでもない。否、だ。街に現れるのは、犯罪嗜好者か、奴等に食われるだけの弱者だ。俺は見たい。見たいんだ。何をされてもいい俺を前にして、人間の欲望が理性を殺す光景を。化け物が誕生する、まさにその一瞬を。いや、俺も悪を生み出す悪に変わりないな」
落書きだらけの路地裏。縄で後ろ手に、椅子に拘束された半裸の男はニタニタと気味の悪い笑みを浮かべた。
彼が座る椅子の横には『ご自由に傷付けて。』と白色の文字で書かれた妖しい紫色の光を放つ電飾看板。
もう1番間近で感じているじゃないか。人間が壊れていく、その異常さを。
不思議なことに彼はまだ無傷だった。
ホラー
公開:20/10/24 21:31
更新:20/10/25 23:34

夜文学。( 夜の街。 )

朝が来なくなった街、「夜の街」。
そこで生きる、歪な彼等の日常。

Twitterでも「夜の街」の140字小説を書いてます、是非。→ @UhKmBUQ168TjY5a

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