縁劇場「ゆかり」

22
18

亡き親族の名場面が観られると評判の縁劇場「ゆかり」を訪ねた。
場内は個室になっていて、縁目には『祖父 祖母 曽祖父 曽祖母』とあり、そこから一人を選ぶ。
ちょうど今日が、九十九歳の白寿で大往生した祖父の一周忌ということもあり『祖父』を選んだ。
祖父は、中世に瀬戸内海で活躍した村上水軍の末裔で、戦時中は戦艦大和に乗船する予定だったが、呉軍港での訓練中に負傷し、海軍病院で終戦を迎えた。
戦後、戦時中のことを語らなかった祖父だが、戦艦大和に乗船して亡くなった戦友を死の間際まで弔っていた。
スリーディー映像技術を駆使した舞台に、入院中の若かりし頃の祖父が登場した。見舞いに来た同郷の戦友が「故郷へ帰ったら、これを届けてほしい」とマッチ箱を置いていく。その中には毛髪と切った爪が入っていた。この戦友は、そのあと戦艦大和に乗船して亡くなった。
祖父の知られざるエピソードシーンに涙しながら舞台の幕は下りた。
その他
公開:20/10/23 19:42
親族 名場面 劇場 祖父 祖母 曽祖父 曽祖母 九十九歳 白寿

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容